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楯野川がもっとわかる虎の巻

第七巻は酒造り その3「醪(もろみ)、発酵」についてご紹介いたします。前巻同様、今巻も特に専門用語が多くなっておりますが、市販で販売されている日本酒に関する書籍などを参照いただくと、より理解が高まります。

第七巻 酒造り その3「醪(もろみ)、発酵」

醪について

醪について

「醪(もろみ)」はアルコール発酵が行われる重要な工程です。香味の良い日本酒にするには、原料処理、麹、酒母の出来はもちろん、この醪の工程で糖化と発酵をバランスよく進める必要があります。日本酒「楯野川」では高精白米の使用、三段仕込み、低温発酵を採用しています。高度に精米することで雑味を押さえ、三段仕込みは徐々に仕込み量を増やすことで、酵母が薄まることを防ぎ、優良な酵母が働きやすい環境を作ります。また、低温発酵した醪は、香味がよく、酸味も少ないのが特徴です。 醪造りの流れや特にこだわっている点について、蔵人にインタビューしました。

Q: 醪の段仕込みについて詳しく教えてください。

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A: 日本酒「楯野川」は三段仕込み(添・仲・留)です。以下のような流れで進めてゆきます。

前日(酛下げ): 酒母が13日かけて完成すると、酒母室から仕込み蔵へ移動します。

1日目(添え):酒母に麹、仕込み水、蒸米(掛米)を混ぜます。酒母の約2倍の量になります。

2日目(踊り):醪に何も加えることはありません。酵母を十分に増殖させて活性化させます。

3日目(仲):1日休ませて、酵母を増殖させた醪に麹、仕込み水、蒸米(掛米)を混ぜます。添え仕込みの約2倍の量になります。

4日目(留):醪造り最終日です。麹、仕込み水、蒸米(掛米)を混ぜます。仲仕込みの約2倍の量になります。

発酵について

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日本酒「楯野川」は酒母造りで13日、醪の三段仕込みで4日、醪の発酵工程で28~30日要します。原料米の品種及び品質、麹の出来、気温など、発酵に与える様々な要因が影響し、全く同じ仕込み配合の醪でも品質にバラツキがでます。その品質のバラツキを極力少なくするために、醪サンプルを採取し、分析データ(日本酒度、アルコール度、酸度、アミノ酸度、グルコース)の数値を参考にしながら、毎日温度管理を徹底しています。醪の状態を常に把握することは、毎日健康診断を行い体調管理しているような状態です。 醪の中では、麹の酵素による蒸米の溶解糖化と、酵母によるアルコール発酵が同時に行われています。これを並行複発酵と言い、高濃度のアルコールを生成することができます。ビール醸造は単行発酵(糖化と発酵が別)で、ワイン醸造は単発酵(糖化がなく発酵だけ)なので、日本酒醸造はいかに手間がかかるか分かります。