酒造りは人づくりです。人間を磨くと、酒も磨かれていきます。
当社が経験や実績ではなくて“人柄”で採用を決めているのも、そして人間性を育てることに最も力を入れているのも、そうした考えに基づいてのことです。揺らぐことはありません。
どれも基本的なことであると同時に、人間のあり方としてとても重要なことです。だからこれらがしっかり身についている方を、当社では採用しています。
実は当社は大きなトラブルに見舞われたことがありました。製造工程で考えられないミスが発覚し、それが原因で製造責任者をはじめとして蔵人が立て続けに退職。残ったのは3名のアルバイトだけになってしまったのです。
この“トラブル”をきっかけに私は「酒造りより人づくりが重要」と発想を逆転。杜氏を蔵に招いて酒造りを委ねるのでなく、人柄のしっかりした“社員”が支え合いながら酒造りする態勢へと変えました。任せて育てる仕組みになったことで、新人が成功体験を重ねながら成長する風土が生まれ、楯の川酒造は大きな変貌を遂げました。それはまさに逆境を追い風に変えた、自己変革そのものでした。
酒の中で唯一“日本”という国名が冠されているのが日本酒です。しかも原料は国産の米で、それが何倍もの付加価値のある製品へと生まれ変わったのが日本酒です。この素晴らしいプロダクトが果たしてそれに見合う評価を得ているだろうかという疑問が、私にはありました。
戦後すぐ、日本酒一升は当時の大工の日当に等しかったそうです。今のお金に直せば2万円。それを思えば、日本酒が正しい評価を得ているとはとてもいえないでしょう。そんな現状を変え、日本酒の価値を高めたいという志から2010年に生まれ、2021年に昨今の社会情勢を踏まえ再策定されたのが「TATENOKAWA100年ビジョン」でした。
1832年の創業以来、楯の川酒造は徹底して品質を追求し、日本の「酒」「食」「農」文化の発展に寄与してきました。
変化する時流を掴み続け、付加価値の高い商品を創出することで、持続的成長を実現し、MADE IN JAPANを世界に広げる総合酒類カンパニーを目指していきます。当社のこのチャレンジは、日本酒業界そのものの変革につながっていくことでしょう。
今後当社は製造業という枠にとどまることなく、流通や小売の機能まで取り込んだバーチカルな事業展開を目指します。また日本酒だけでなくワイン(関連会社にて醸造)やウイスキーも製造していく考えです。
これから入社される皆さんには、そうしたダイナミックな変革をお任せしたいと考えています。蔵で酒造りに取り組んでくださる方はもちろんのこと、ECを強力に推進するIT人材、将来的にIPOを視野に入れたファイナンス人材にも、力を発揮していただく考えです。責任ある仕事を大胆に委ね、その成功を通じて成長を促すという考えに変わりはありません。ぜひ存分に腕を振るっていただきたいと考えています。