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六代目蔵元 佐藤淳平 私の履歴書

「楯野川」のコンセプト (楯野川新聞 2015年6月15日号より)

いつも楯野川新聞をご覧いただきありがとうございます。前回までは、日本酒「楯野川」をどうしていったらいいか悩みに悩んでいた、という所までお話しました。

これといって解りやすい特徴がなかった「楯野川」。そこに、鮮明なコンセプトやこだわりを打ち出すことによって、日本国内のお客様だけではなく、海外のお客様にもはっきりと銘柄の特徴を理解していただけるにはどうするべきか。重点的に考えました。

そこでまずは、上槽前のアルコール添加を止めようということになりました。 それまでの「楯野川」のラインナップには、「清流 吟醸仕込み」や「大吟醸 山田錦」など、醸造アルコールを添加したものがいくつか存在しており、それを廃版または純米系にリニューアルすることに決めました。

「清流 吟醸仕込み」には固定ファンがついており、個人的にもアルコール添加したお酒の良さも十分理解しておりました。お客様からお叱りを受けることにもなるでしょうし、全国新酒鑑評会へ純米酒で出品するとなると金賞受賞が難しくなるなど、アルコール添加を止めることで様々な問題が出てくる事も容易に想像できました。

しかし私は、躊躇う事なく「全量純米」へのシフトを決断しました。

『主原料である米を贅沢に使用した日本酒を醸造・販売することで、米の消費拡大を推進し、地元の農業に貢献できるのではないか。』『それこそが、日本酒のあるべき姿ではないか。』そのように考えたからです。

「日本酒楯野川はH22BYより、全量純米になる」

ここまでは、明確なコンセプトを打ち出すことができました。

しかし、全国の蔵元を見渡すと、既に全量純米酒の蔵元は多くなっており、そことの差別化をどうするのか。そして、純米、特別純米、純米吟醸、純米大吟醸…といった『特定名称酒の複雑怪奇なカテゴリ分け』など、全く日本酒を知らない人にもわかりやすくするにはどうしていったら良いか。100~200年後でも十分やっていけるような、更に一歩踏み込んだコンセプトが必要なことを痛感致しました。

六代目蔵元 佐藤淳平